双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 ふと、白金台の実家に行ってみようかと思い立った。自分の子どもの頃の写真でも見れば思い違いかどうかわかるはず。

 道中つらつらと考えた。

 茉莉は子どもの存在を隠していた。子どもに気を取られて、さっき彼女の様子がどうだったかわからないが、隠そうとしていたのは間違いない。

 三年前、もしや茉莉は俺に妊娠の告白ができなくて消えたのか。

 よりによって俺のスマホが壊れたタイミングで。

「うかつだった」と思わず独りごちる。

 彼女が消える前に、せめて店の名前だけでも、どうして聞いておかなかったのかと何度も悔やんだ。

 茉莉は自分についてあまり語ろうとしなかったが、情事のあと、俺の胸の中で彼女は『父の影響なの』とポツリと言ったことがある。

『航空整備士だった父は、休みの日になるとよく空港に連れて行ってくれて』

『そう。今はお父さんはどこに?』

 ひと口に航空整備士と言ってもエアラインの所属とは限らない。俺が知っている人かと興味深く聞くと、もういないのだと打ち明けた。

『私が小学生のときに病気でね』

 それきり彼女は実家についてなにも語らなかった。

 燎から聞いた話では義父は彼女に冷たいという。きっと頼れなかったに違いない。彼女がここにいるのがその証拠だ。

 実家を頼れずふたりも子どもを抱えて、どれほど不安だったか。

 かわいそうに、茉莉――。胸が押し潰されそうだ。

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