双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 自分で選んだ道だし、つらさを上回るたくさんの幸せな記憶があるからいい。愛してくれる夫がいなくても私はいいが――。

 子どもたちに父親の記憶がないのはどうなのかな。

「あるこー、あるこー」

 翔真が歌い出すと、大空も「あるこー」と一緒に歌い出す。

 ふと、昨日、母に言われた言葉を思い出した。

『子どもたちの未来を考えなさい。双子を育てていくのにどれだけお金がかかるか。おばあちゃんたちにいつまでも頼っていられないでしょう』

 突きつけられた現実の重い壁に、胸が塞ぐ。

 実の父が亡くなってからの経済苦を忘れたわけじゃない。

 シングルマザーの道を選んでからも、祖母が救いの手を差し伸べてくれなかったら、私たち親子はどうなっていたかわからない。

 努力だけでは生きていけないし、自分だけの力ではどうにもならないと、今の私は十分わかっている。

 空を見上げ、飛行機雲に問いかけた 。

 どうしたらいいと思う?

 私はどうしたら。

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