双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
「珍しいな」と仁がいうのも無理はない。酒は好きだがフライトを考えると、どうしても飲むのは度数の弱いものになる。この店に来てもいつもビールにしていた。

「たまにはね」

 仁は立ち上がりカウンターの中に入る。

「いぶりがっこを貰ったんだ。食べるか?」

「ああ」とうなずく。

 マスターが出したお通しはガーリックの香りがするクリームチーズだ。

「そのクリームチーズと一緒に食べてみろ。旨いぞ」

 ジンソーダを味わって言われたとおり、いぶりがっことクリームチーズを口に含む。

 確かに旨い。

「これは酒が進むな」と言うと、仁が「だろ?」と笑った 。

「なあ仁、お前は結婚しないのか?」

「なんだよいきなり」

 彼の周りにはいつも女がいる。この店には連れてこないが、今だってつきあっている女はいるはずだ。

「しないね。今つきあってる彼女は女優だからな。向こうも結婚なんか考えちゃいないだろうし」

「いつかはするだろ? 今の彼女じゃないとしても」

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