双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 私は甘い言葉に慣れていないから、我慢していたのに、唇が震えてしまう。

 どんなに好きでも、それだけじゃ解決でない問題だもの。私じゃ、航輝さんや子どもたちの足を引っ張っしまう。それじゃダメなの。

 体を離し、心を鬼にする。

「あの子たちを、航輝さんに――、航輝さんに」

〝あげます〟

 そう言うだけでいい。

『取り返しのつかない嘘だけは、つかない方がいいわね』

 祖母の言葉を、今思い出さなくたっていいのに。

「あ、あの子たちを……」

 うっ、う。嗚咽が漏れてしまいそうになり、手で口を押さえた。

 耐えなきゃ、航輝さんに悟られてしまう。

「茉莉?」

 子どもたちのためだもの、たとえ取り返しがつかなくたって構わない。憎まれても、どんなに嫌われたとしても、言わなきゃいけない。

「航輝さん、私これからはひとりで自由に、あの子たちは、あ、あの子たちは」

 私なんか――。

 ――義父からの電話は大福さんとの見合いの件だった。

【どういうつもりだ!】

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