双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 茉莉の母親とは、実は密かに連絡を取ったのだ。

 別荘にあった電話は、出迎えてくれた警備員からだった。

 俺としたことがスマホをドライブモードにしたまま失念していたせいで、予め伝えておいた別荘のほうにかけてくれたのだった。

「本日はすみません」

 頭を下げると、茉莉の母親は「こちらこそお世話になります」と頭を下げる。茉莉によく似た優しい表情をした女性だった。

 彼女は幸い、鶴見との離婚を計画していた。すでに茉莉の弟と妹はウイークリーマンションに移動したという。

「早速、行こうと思うのですがよろしいですか?」

「ええ、もちろんです」

 鶴見は女性従業員と浮気をしていた。その女にマンションを買い与えたほか、店の金を使い込み、遊興費に充てた。金が足りなくなったところで、茉莉を大福に売り飛ばす計画を立てたのだ。正真正銘のクズである。

「まさか裏でそんな約束があったなんて。茉莉に申し訳なくて……」

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