双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 首を回すと、母や妹たちの笑顔が見えた。新しい服を着ておしゃれをして、みんな元気で楽しそう。

 離婚宣言からほどなくして母はサクッと離婚した。

 鶴見の店を母が離れると、従業員も一斉に退職届を出したらしい。職人がいなくなった店は、鶴見ひとりではどうにもならず開店休業状態だそうだ。私とはもう赤の他人だが、血縁のある妹と弟のためにも、これ以上誰にも迷惑をかけずにいてほしいと願うばかりである。

 母の新しい店は来月完成する。中校生の妹は、いずれ母と一緒に店を切り盛りするのだと燃えているし、小学生の弟も新生活が楽しそう。みんな今回が初めての海外旅行で、しかもファーストクラスの旅とあって、戸惑いつつもとても喜んでくれている。

「茉莉」

 振り向くと、航輝さんが隣の席から身を乗り出していた。

「ん? なあに」

 首を傾げる私の頬に、チュッと彼はキスをする。

「ようやく今日を迎えられたな」

 照れながら、うんとうなずく。

 この半年、なにかと忙しかった。

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