双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 言われなくてもわかっている。子どもの存在を内緒にしてもらうだけでも紗空には申し訳ないのに、これ以上の口止めはしたくないもの。

 ため息をついて「なんなのよ」と小さくぼやき、嘘だってあなたのためなのよ、と心で続けた。

 一方的に姿を消した私も悪いが、それには事情がある。

あなたのためにも、私と子どもたちのためにも、ああするしかなかった。悩みに悩んで出した結論だから、今も後悔はしていない。

 それにもう三年経ったのだ。お互い別の道を歩んでいる。もしパートナーがいても責められる謂れはないと思う。

「仕事が忙しくてそれどころじゃないんです」

 不機嫌さを隠さずにそう言った。

「ほぅ」

 なにが言いたいのか、彼は意味深にやりと口角を上げる。

「それなら今後、気兼ねなく誘えるね」

 トクンと心臓が跳ねた。

「言ったじゃないですか。私は忙しいんです」

 もしかして、からかってるの?

 キッと睨むと、楽しそうに笑った彼は、シャンパンを飲んで首を傾げた。

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