双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
私の実家は金沢にある老舗『卯さ来』という和菓子屋である。
ここは東京。店を手伝っている母とは滅多に会えない。
昨日、一年ぶりに上京した母は縁談を持ってきた。
『うちのお客様だから知っている方なんだけど、いい人なの。資産家だから経済的な心配もいらない し、ご両親とは同居しなくていいんですって』
私、鶴見茉莉は二十八歳のシングルマザー。もうすぐ二歳になる子ども 、大空と翔真という双子の男の子がいる。
結婚なんてまったく考えていなかったが、母が言った最後の言葉に、心が揺れた。
『子どもたちが小さいうちなら、きっと懐くわ。優しい方だから』
自分の気持ちだけなら、この先ずっと結婚しなくていい。とはいえ子どもたちの将来を考えるとそうも言っていられない。
結局、簡単には断れなかった。
『少し考えさせて』
『わかったわ。じっくり考えてみなさい』
ため息混じりに、テーブルに置いたままになっている白い封筒を取る。