双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 私と航輝さんは束の間の接点を持っただけで、またそれぞれの場所に戻る。子どもの話をしない限り、それで終わるのだから。

【茉莉たち、とてと楽しそうに見えたんだけどな】

 電話口で苦笑する。

「それはまぁね。久しぶりに会ったし」

【夕べね、燎さんに聞いてみたの】

 紗空は子どもの存在を秘密にしたまま、親友が心配だという体で航輝さんについて探りをいれてくれたらしい。

 彼はエーゲ海で船酔いした私を助けてできた縁だと言ったそうだ。紗空の夫に体の関係まで言ったかどうかはわからないが、そこは気にしないようにする。

「私に貸しがあるとか、言ってなかった?」

【え? 貸し? ううん、そんな話はしてなかったわよ? 三年前に会ったきりだって】

 じゃあ、何の話よと思ったが、それよりも、気になるのは彼の結婚だ。

 婚約者とはどうなっているのか、やっぱり知りたい。

「紗空。彼が結婚はしていないってわかったけど、――婚約は、しているんでしょ?」

 口にした途端、胸が苦しくなる。

< 70 / 292 >

この作品をシェア

pagetop