双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
「え? ああ、不倫の色っぽい女性ね」

 色っぽいとは言っていないわと紗空は笑って否定するが、私の頭の中には、ぽってりした赤い唇のグラマラスな女性が浮かんでいる。

「ねえ茉莉。神城さんと会っているとき、そんな女性がいた感じはしたの? 自宅マンションには行ったのよね?」

「うん。行ったけど――」

 一度だけ、彼の部屋に行ったことがある。

 興味津々だったから、実は結構チェックした。

「お泊まりしたのよね? 女性もののなにかあったりした?」

「なかった、と思う。洗面所にもバスルームにも」

 歯ブラシもコスメもなかった。

 なんだったら、洗面所の下の収納も覗いたし、タオルが入っている棚の引き出しも見たのに、どこにも女性の影なんてなくて、むしろ拍子抜けしたくらい。

 痕跡さえあれば、すぐさま心にブレーキをかけられたのにと、うれしいような複雑な心境だったのをよく覚えている。

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