双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 お相手の方は老舗旅館の若旦那。前の奥様は病気で死別。四十五歳。写真の彼は和服を着ている。身体的特徴は、右目にやや目立つ泣きぼくろがあることくらい。年齢よりも若く見える普通に素敵な人だ。

 ひと回り以上年上なのは別にいいとして、老舗か……。

 私の実家は老舗だけにしきたりが厳しく、とても苦労した。私が母の連れ子だったのもあるが、その辛い経験ゆえに老舗とか資産家と聞くと、どうしても抵抗があり、暗い気持ちになってしまう。

 でも、同じ苦労をした母が太鼓判を押すのだから、心配はないのかもしれない。

 従業員の評判も悪くないというし、ご両親と別居でいいなら、なんとかやっていけるのだろうか。

 ただ、この写真を見ても心が一ミリも動かないのはどうなんだろう。

 お見合いってそういうものなのかな。

 ふいに彼が脳裏に浮かび、ハッとした。

 慌てて首を振り、残像を消す。

 恐ろしいほど素敵だった彼と比較してはダメ。どんな人も霞んでしまう。

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