双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
「聞かなくていいよ、紗空。理由はどうあれ彼は、私にとって一番大切な時期に音信不通になった。スマートフォンの故障が原因だとしても、そういう運命だったんだよ」

 一番不安なときに、彼は返事をくれなかった。

 それが運命の女神がくれた答えだ。

 連絡先を消し、電話番号も変えたときに思った。たったこれだけ切れる糸。指先で突くだけで割れる、薄く張った氷みたいに。脆い関係だったのだ。

 時折襲ってくる悪阻で苦しみながら、悲しさに耐えきれずトイレで泣いたのも一度や二度じゃない。

 ふいにあの頃の悲しみが蘇り、負けないように大きく息を吸う。

「紗空、私と彼はもう、三年前に終わったの」

 しかも幼馴染の婚約者は一流大手航空会社の社長令嬢だという。

 私は格安航空会社のもとCA。差がありすぎて笑えてくる。

「うーん……」

 紗空は困ったように言葉を濁す。

「でもね茉莉、神城さんに今付き合っている人がいないのは本当みたいよ?」

 だとしても。

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