双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 エーゲ海で出会ったとき、彼女 はボロボロに傷ついていて、夢に破れ泣いていた。

『努力すれば夢は叶うと思っていたの』

 健康問題という自分ではどうにもできない理由で、夢をあきらめざるをえない彼女の無念さを思うと、突き放せなかった。

 寂しいとき、つらいとき、細い肩が誰かの温もりを求めるのは当然だろう。

 悲しみもなにもかも、青い海の泡にして流してしまえばいい。すべてを忘れられるよう、忘我の果てを見せてやろうと強く激しく抱いた――。

 涙を浮かべながら俺にしがみつくようにして、彼女は必死に応えていた。

確かにきっかけはまるでワンナイトラブのようだったし、付き合った期間は三カ月余りと短い。だが、俺たちの絆はしっかりと結ばれていたと思っていた。

 なのに、忘れもしない三年前。繋がっていたはずの糸をぷっつりと切ったように、彼女は俺の前から消えたのだ。

『未来のない関係よ』

 本当にそう思っていたのか?

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