双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
『最初にあなたが言ったんじゃない。君と付き合う気はないよって。私たちそういう関係だったでしょ』

 確かにそんなようなことを言ったような気もする。まだ彼女がどんな女性かもわかっていなかったから。

 パイロットという職業だけで寄ってくる女は少なくない。一度だけと言いつつ執着してきたり、目の色を変える女を見てきただけに、うかつに職業を明かす気にはなれなかった。

 それに茉莉の場合は国際線のCAになるという夢をあきらめた過去がある。辛い経験を思い出させるような気がして、言い出せなかった。

 だがそれが、未来のない関係だと彼女に思わせてしまったとしたら――。

 深い息を吐き、カップを手に取ると、ポンと肩を叩かれた。

「おはよう神城」

 振り返ると同期のコーパイがいた。

「相変わらずクールだなぁ。田中さんしょんぼりしてたぞ」

 さっきの会話を聞いていたらしい。

「スイッチを押すだけなのに、やってもらう理由がないからね」

「まったく、見た目と違って、身も蓋もない奴だ」

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