双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 昔から、いつも笑っているような目もとだと言われる。

 だからって優しいわけでも笑っているわけでもない。

「で? 今帰り?」

 新人CAをからかっているときとは表情を一転させた彼は「まいったよ」とぼやく。

「どうした」

「向こうの間抜け管制がやらかして、危うくニアミスだ」

 管制官が機体ナンバーを言い間違えて着陸時の指示を出したらしい。実際には言ってすぐに間違いに気づき修正したという。ニアミスは大げさとはいえゾッとする話には違いなく、思わず顔をしかめた。

 どんなに気をつけていてもヒューマンエラーは避けられない。かといって完全な自動操縦になるにはまだ長い年月がかかるだろう。現在もパイロットが必要データを入力した上での自動操縦だ。突発的な事態に対応するのは、パイロットの判断にゆだねられている。

 俺たち旅客機のパイロットは、百人を超える人々の命を預かって飛ぶ。管制官の言葉に従ったという言い訳は通らない。信頼しつつ、幾重にも用心を怠らない心構えでいくしかないのだ。

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