双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
「それで神城は、どうした? ずいぶん早いな」

「前線が気になってね」

 上空の話を少ししたあと、ふいに彼が「キャプテンは誰?」と聞いてきた。

 俺はふたりの名前を挙げた。ヨーロッパ路線は遠距離のため、キャプテンがふたり搭乗し、途中交代する。

「湖山(こやま) さんか」

 意味深にニヤリと口もとを歪めた彼は、「have a nice flight」と軽く俺の背中を叩き、きびすを返す。

 湖山キャプテン。

 五歳年上の先輩。容赦なく鋭い指摘をしてくる厳しい人だ。ついでに言えば俺の名ばかりの婚約者、湖山麗(れい)麗華(か)華の従兄である。

『結婚の話、そろそろ進めたらどうだ』

 今からひと月前、彼と同じシップに乗ったとき、彼にそう言われた。

『何度も言いますが、俺は誰とも婚約していませんよ』

 湖山さんはとても信じられないという表情をした。

『それ、本当なのか?』

『ええ』

 麗華は許婚と言われているが、あくまでも子どもの頃の話だ。

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