月とスッポン  奈良へ行く
「思った事は口に出して下さい。
『お腹すいた』『トイレに行きたい』『疲れた』『休憩したい』なんでもです。
言わなくてもわかるなんて思わないで下さい。
あなたのこと、1ミリも考えたくないんで。
あっ、もちろん『飽きた』『つまらない』『帰りたい』と言っていただければ、最寄り駅ぐらいまでならお送りしますよ」

クッと笑う。

「わかりました。『なんでもいい』『どこでもいい』『どっちでもいい』でしたでしょうか。
これらに気を付けて、思った事を声で出していけば良いのですね。
『気を使わない為に』ですか。とても明確でわかりやすい」

「素晴らしい」と頷きながら、

「食べ物の好悪もアレルギーもありませんが、甘いものは好んでは食べません。
なので、気をつけるのは私の方ですね」

と私の質問に答えつつ、

「始めに明確にするのであれば、
運転や支払いなどは私が主にしたいのですが」

と自分の要望を加えてきた。

眉間に皺を寄せる私の顔を見て
「それではあなたは納得できないですよね」
と付け加える。

「海と出かけてる際はどうしているのですか?
あの子は運転出来ませんよね」
「運転は苦ではないので全て私です。
その代わり、ご飯や入場券なんかの出費を海が負担してます」

「では、こうするのはどうでしょうか?」

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