月とスッポン  奈良へ行く

・最長2時間を目安に、交互に運転をする事
  目的地から目的地を意味し、途中コンビニ
  などの寄り道の下車は含まれない
・ガソリンや交通費など車にかかる経費は佐山茜が負担し、それ以外を大森大河が負担する事
 その他自分の事は自分でする
  
スマホをいじっていたかと思うと、見事な契約書を完成させて私にスッとスマホを差し出した。

今まで軽快に『あーだ』『こーだ』『あーでもない』と言っていた心地よさが阻害された気分になる。

「なんならサインでもしますか?」と言えば
「そんなに簡単にサインをしてはいけませんよ」と諭される。

嫌味だよとは言えず苦笑いを浮かべた。

「あらかた決まったって事で出発しますか」

空いた紙コップを持ちながら、立ち上がりゴミ箱を探す。

「不具合が生じたらその都度決めていきましょう」

男の紙コップも片付けようと手を伸ばせば、「『自分の事は自分で』でしたよね」と自分の飲んだ紙コップを手に立ち上がる。

神はひとつの体に幾つもの才能を与え、
何をしても絵になる人間って実際に存在させる。

その人の背後なんて関係ない。ただ無性に腹が立つ。

しれっと、運転席に向かって歩く男に「あっちです」と言えば
「もう少し運転したかったのですが」と悪巧みがバレた子供のようだった。

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