月とスッポン  奈良へ行く
気を取り直して


「それは困りましたね」

絶対に困っていない。バカな私でもわかる。
こいつ、絶対困ってない。

「それにしても、最近の曲は知らないものばかりなので、とても新鮮ですね」
「別に最新ってわけじゃないですよ。
知ってる曲が多いリストを選んだだけなので、2・3年前ってところじゃないですか?」

「2・3年前は最近ではないんですね」
「音楽に関しては最近じゃないですね。なんなら変えてもいいですね。音が流れていればなんでもいいんで。
でも、眠くなりそうな音楽はやめてください」

「このままで、大丈夫ですよ。普段耳にしないものを聞くのはとても新鮮です」
「音楽とか聴かなさそうですもんね」

「そうですか?」
「クラシックとか、高級バーとかで流れてる音楽に耳を傾ける程度とかの方が、しっくりきます」

「ここ数年はそんな感じですね」
「そうなんですか?生まれてこの方クラシックしか聞いた事がないって言われても納得しそうですけどね」

「そんな事ないですよ」とさらっと流された。
ただ真実を述べただけになっている。

嫌味が通じない。
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