月とスッポン  奈良へ行く
SAを通り過ぎる。

「あっ」という顔を見て、やってやったぞと少し得意げに
「まだ2時間ではないので、ここではおりません」と言えば
「そうなんですね」と残念そうな声が聞こえた。

次は自分の番だとウキウキしていたのを取り上げられ、しょげる姿が可愛く見えるのはきっと気のせいだ。

「いつも一つおきを止まってます。それがちょうどいいので」
「ちなみにどのような予定を立てているのですか?」

「9時ぐらいに目的地に着けばいいかな?
ぐらいしか考えてませんよ」
「目的地?」

「どこに行くかわかってついてきたんじゃないんですか?」
「奈良に行くとは聞いています」

「奈良のどこへ行くかですよ」
「どこへ行くのですか?」

「わからんでついて来てるんかい」

リズムカルに会話が弾む。

「ちなみにど平日ですけど、仕事はいいんですか?」
「それは私を下車させる作戦ですか?」

「単純な疑問です」

ムッとする私の姿に満足したのか
「冗談です」と小さな笑い声が聞こえた。

「ここ数年大きな仕事を請け負っていまして、それこそ本当に休みなく働いていましたから。
家の事も落ち着きましたので、ちょうどまとまった休みをとったところだったんです」
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