月とスッポン  奈良へ行く
「好きなんですか?そう言う戦艦モノ」
「好きか嫌いかと聞かれれば好きですね。
でも、それだけではありませんよ」

「戦争や災害などの爪痕はなるべくみる様にしています」
「偉いですね」

「自分の幸せは誰かの不幸の上に成り立っている。
叔父の教えです」
「奏臣さんが言うと重みを違いますね」

長い参道をゆっくりと話しながら、拝殿へ向かう。

挨拶を済ませて、祖霊社の説明をゆっくり丁寧に読む。

「彼らは不幸だったんですかね?」
「と言いますと?」
「なんで生きているんだろう?とか、生きていて意味があるんだろうか?とかは考えなくて済みそうじゃないですか」

「彼らには彼らの悩みがあったと思いますよ。彼らのした事に苦しめられた人もいたでしょう。
実際、戦艦ヤマトは、かけた費用の割には大きな仕事をしていないと言われています。
大きなムダ使いだと言う人もいます。
 当時はムダだったり、歴史の会釈で非難を浴びていたかも知れません。それでも何年・何十年経って意味を持つ事もあると思うのです」

[今が無意味でも、何十年後に意味を持つ]

その言葉が私の心に一滴落ちる。
そして波紋のように広がっていく。

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