月とスッポン  奈良へ行く
 大雑把な予定を伝えると、隣でスマホを操作している。
予習しているのだろう。

「細々といっぱい見どころがありますね」

そう呟く。

「あっ」と声がしてから、

「キトラで特別展示があるそうですよ。
当日参加もできるそうですから、最南のキトラ古墳に向かってから、北上して行きましょう」

ん?主権を取られてる?

「ちなみに明日の予定は?」
「法隆寺・薬師寺・唐招提寺あたりを回りたいなと思ってますよ。あとできれば春日大社にも。
でも、12時過ぎぐらいには帰路につきたいなぁとも思ってます」

「そうですか」と呟く。

「そう言えば、宿泊先はどこですか?」
「決まってないですよ。ひとりなんで毎回適当です。
スーパー銭湯とか漫喫とか?」

「それはよくないですねぇ」
「そうですか?
どう行動するか決まってないので、泊まるところを決めてしまって、行動を制限されるの好きではないんですけどねぇ」
「そう言う考えもあるんですね」

なぜか感心される。

「効率を求めても、別のアングルから見れば、不効率。とても興味深いです」

とみたいな事をブツブツを言っているが、聞かなかったことにしよう。

それよりも、デカい鳥居だ。

駐車場の警備員さんの誘導に導かれ車を停める。

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