月とスッポン  奈良へ行く
 知り合いの知り合いから譲り受けた車の助手席で器用に足を組み腕を組み、優雅に目を瞑っている男を横目に見て、大きなため息をつく。

「誰もいない。私はひとり、私はひとり」

『僕らはもうひとりじゃない♩』

なんてタイミングだ!

小さく唸っていると、「クッ」と小さく笑う声が聞こえる。

運転をしていないなら、穴が開くほどニラつけてやりたい。

「ひとりじゃないそうですよ」と人をバカにするように男は言う。

「うっさい」

反射的に即ツッコミを入れてしまった。

「次で降ろす。絶対に置き去りにする」


< 3 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop