月とスッポン 奈良へ行く
あのCMの長谷寺
「食べながら運転は大変ではないですか?」
私に気を使うふりをしながら運転席に乗り込もうとする大河を助手席に追い出す。
ナビ設定をしつつ、唐揚げを食べる。
「飲み物を買い忘れましたね」
などと言うから、コンビニへ寄る。
にこやかに電話をしながら出てくる大河。
運転席でたい焼きを頬張る私を見つけ、少しがっかりした顔をするのが解せない。
「お待たせしました」
と言う割には、しょうがなく助手席に座ると言った感じか。
「今晩の宿なんですが、謙太郎が手配してくれたので、そちらに泊まろうかと思います。
法隆寺の近くなので、ルート的にも問題はないと思います」
たい焼きを齧り中の私。
「ふーん」しか発せれないのに、理解出来ているのかと不安そうな顔で「いかがでしょうか?」と問う。
「いいんじゃないですか?
そこで降ろして、朝、法隆寺で合流って事でしょ?」
「あなたも一緒に泊まるんです」
「私もですか」
不満げに答えれば
「私が1人で泊まってどうするのですか?」
となぜか怒られる。
「なんでもいいですよ」と投げやりに答える。
「本当に良いのですか?最上階がいいとかジェットバス付きでないとダメとか」
「とか?」
「朝食はイングリッシュブレックファーストでないとダメとかないんですか」
「何それ」
どんな女と一緒にいたんだよと笑えてくる。
ハイレベル女子は大変だ。
苦笑いすれば、大河は不服そうにしている。
「どうせ寝るだけでしょ」
「拘りとかはないのですか?」
「全く。
泊まる所なんて、雨風さえ凌げれば十分ですし、朝食なんて食べれればラッキーぐらいしか思わないですよ」
「それが若さなのでしょうか?」
「全く関係ないと思います」
間髪を入れずに答える。