月とスッポン 奈良へ行く
この景色を目に焼き付けている。
上を見上げればまだ先があるんだと、気合を入れ直し、中廊を登り切る。
登廊の雰囲気が変わり、人がいなくなるのを待って、写真に収める。
上廊を登り切れば、また世界が変わる。
登りきった‼︎と伸びをすれば、大河は
「なかなかの登りごたえのある階段でしたね」
と呟きながら両手を膝に乗せていた。
封鎖された幻想的な世界から一気に広がる空が、より一層高く広く感じさせてくれる。
本堂に入り、拝所から挨拶をしてから、辺りを見回せば、太陽の光を反射して輝く本堂の床に目を奪われる。
その向こうに見える山の緑。
永遠に見ていられる。
舞台に場所を移し、国宝の本堂を眺める。
私なんかには、想像もつかない程の歳月をこの地から見守っていた本堂の重圧感、それを彩る五色幕。
そして、振り返ればその重圧感から解放されて広がる景色を堪能する。
「素晴らしい景色ですね」
「そうですね」
「登った甲斐があったとはこの事を言うのですね」
「そうですね。で、御朱印はいただけましたか?」
「はい」
「では、永遠と観てられますけど、次の目的地が私達を呼んでいるので、下山しましょう」
「そうですね」
せっかくここまで登ってきたので、もう一度登廊を堪能しようと、来た道を辿る。
「まだ回り切れていませんが、大神神社と共に次回ですね」
なんて言っている。
次なんてあるんだろうか?