月とスッポン  奈良へ行く
受付を通り越し、駐車場へ向かう。

車に到着し、出発の準備を整えていると、大河がストレッチをしていた。

「お疲れ様でした」と声を掛ける。

「体力には自信があると思っていたのですが、なかなか足にきます」
「次の目的地まで私が運転しますので、足を休めたらいいんじゃないですか?」

「心配おかけ頂き、ありがとうございます。
でも、大丈夫ですよ」

 ストレッチを済ませた大河が意気揚々と運転席に乗り込み

「では、一気にキトラ古墳まで行きましょう」

とアクセルを踏んだ。

「あそこが古墳ですね」
「あの山向うにお墓があるそうですよ」
「安倍文殊院にも行くたい」
「飛鳥寺は外せないですよね」

流れて行く景色から、話題が広がって行く。

お互いに無理に会話をしているわけでもなく、ただ口にした事に対し、反応しているだけなのに。

心地よい。

意味もなく、目の前に見える事だけを話していると、あっという間にキトラ古墳までたどり着いた。

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