月とスッポン  奈良へ行く
キトラへ
車を降り、一気に広がる開放感に大きな伸びをする。

「明日香は、より一層空が広く感じられますね」

大河も同じように大きく伸びをしている。

意図せず同じ体勢で同じような事を考えていた様で、つい笑みが溢れる。

「とりあえず、四神の館で参加出来るか確認してから散策しましょう」
「了解です」

素直に返事が出来たのは良いが、やっぱり主権を奪われている?

まぁ、ここに来て検索をかける手間が省けたという事でよしにしよう。

壁に映し出されていく映像に、釘付けになっている間に、大河が受付から戻ってきた。

「事前受付が必要だそうです」
「そうなんだ。残念だね」

「ですが、次の回の参加者が定員割れしているそうで、参加出来ることとなりました」

嬉しそうに、イベント用名札を自慢げに見せつけてくる。

どこかのテレビで見た光景を実際にやる人間がいるとは。
なんだか腹立たしい。

それでも幸運な事は間違いない。

振り向き「ありがとうございます」と会釈をすれば、頬を赤らめたお姉さんが手で口を押さえていた。

イケメンって凄い。

「10分ほどで、札の番号が呼ばれるそうです」
「では、お手洗いに」

席を外し戻ってくると、少し離れた所で、大河が電話をしている。

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