月とスッポン  奈良へ行く
 今日撮った写真を確認していれば、目の前に立つ人の気配で顔を上げる。

「呼ばれましたよ」

入場前に説明を受け、オペラグラスを受け取り中に入る。
好きに見学して良いとの事なので、人の少ない方へ足を運ぶ。

展示されている壁画をオペラグラスを使って見てみれば、あまりの細かさにため息が漏れる。

説明を読み、壁画を確認する。
それを何度も繰り返してしまう。

人の流れがこちらにくる気配で次の壁画へ移動。
それを繰り返し、他の展示もじっくりと読んでから、最後に壁画を見る。

あっという間の時間。

暗闇からホールに出れば、現実世界に戻ってきたんだと、実感する。

「あちらにレプリカの展示があるそうですよ」
「行きましょう」

レプリカだと分かっていても、原寸大だと迫力がある。

「写真を撮って頂いでも良いですよ」
と案内のおじ様に言われ、スマホを取り出す。

こう描かれていたのか

お互いがまんぞくするまでじっくり見る。見終わって、大河を探す。

画面に釘付けの大河。
横にそっと立つ。

「いつまでも見ていられます」
「わかります」

流れている映像が始めに戻る。

「キリがありませんね」
「地下道を潜った先に売店があるので、見に行ってきます」

歩き出す私。

「私を置いていかないでください」

そう言う大河の声も少し嬉しそうに私の横を歩いている。
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