月とスッポン  奈良へ行く
やっぱり欠かせない飛鳥

やっぱりこの世の中は実際に目にしてみないとわからない事だらけだ。

「もっと大きいと思ってました」

中に入り挨拶をしていれば、飛鳥寺の人が丁寧に説明してくれる。
その話に耳を傾けた。

「ご自由にお写真をお撮りください」

最後にそう言われれば、撮らない訳にはいかない。

スマホを取り出し、大仏に会釈をしてから、最適なアングルを確認しながら撮っていく。

横を見れば、同じように大河も写真を撮っていた。

「撮っていいと言われたので」

少し恥ずかしそうに呟く。

「撮れる場所はほとんどないので、ありがたいですよね」
「写真を撮らないから、ズームで細部を見させて欲しいって、いつも思いますもん」


本堂を出て、蘇我入鹿の首塚へ向かう。

大河は南の方向を指をさす。

「ここから700Mほどにある飛鳥寺京で首を斬られ、ここまで飛んできたそうですよ」
「入鹿凄っ」

素直な感想なのに、大河は私を残念な子を見るように見ている。

「蘇我入鹿が何者はわかってますか?」
「えっ、応仁の乱のやられた人?」

「大化の改新です。正確には“乙巳の変”で中大兄皇子と藤原鎌足に打たれた方ですね」
「じゃぁ、悪い人?だったんだ」

「一概には言えませんけど、歴史上は古代の大悪人とされています。
いつの時代も権力を独占すると言うことは、一歩間違えば世紀の大悪人とされてしまうと言うことです」

大河による説明が始める。

「時代の変革者の一面もありますので、彼がいなければ今の世界は違ったのかも知れません」

大河の説明を「へー、詳しいですね」と聞きながら来た道を戻る。

「中学の時に習ったと思うのですが」

「中学の授業内容をよく覚えてますね」と言おうと思ったが、やめておく。

言えば、墓穴を掘る事になる予感がする。

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