月とスッポン  奈良へ行く
「まずは大和牛のサーロインから食べてみて下さいキメが細かく、柔らかいながらも肉の旨みをしっかりと感じられますので、濃厚な肉の旨みを堪能できますよ」

恰幅の良いおじさんが焼いてくれる。

「どうぞ」と差し出され、一口。

「うっま。肉がトロける」
「本当に躊躇ないですね。それは大和牛への信頼ですか?」

「店主への信頼です」
「信頼できるんですか?」

「えっ」
驚いた顔で恰幅の良いおじさんが大河を見る。

「具体的に食材説明をして、美味しさを表現するのは、その食材への自信の表れです。
脂身が少ないランプやヒレからではなく、サーロインを出す辺りが好感を持てます。
大和牛は初めて食べますけど、この脂身を感じてこその大和牛なんですね」

「お嬢ちゃん、わかってるねぇ。美味しいの持ってきるから待っててね」
「ありがとうございます」

置いて行ったメニューをパラパラを見る。

どれも魅力的だ。
せっかくなのだから、大盤振る舞いをしよう。

「すみません。このサラダとご飯。それから烏龍茶と包み野菜の盛り合わせを下さい」

近くを通る店員を呼び止め注文する。

「大河さんは?ご飯食べます?」

「とりあえずそれで」と店員にお願いをして、メニューを大河に渡す。

「どれも美味しそうですね」

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