月とスッポン  奈良へ行く
そう言うと恰幅の良いおじさんは奥へ入って行った。

戻ってきた大河と同時に奥から聞き覚えのある声が響く。

「茜ちゃん‼︎」
「本多さん」

「きゃー、久しぶり」と言いながら、お互いの腕を触る。

「なんでここにいるの!」
「お肉をいっぱい食べたいって言ったら、ここに連れて来られました」

“アレに”と大河を指差すと、
「彼氏?イケメンじゃない」と腕を叩かれる。

「違います。そして、痛いです」

感動の再会を果たし、

「大河君の事、よろしくね」

本多さんに熱い握手を握られながら言われたが、忘れようと思う。

よろしくはしたくない。

「奈良に来る時はまた顔を出してね」

と本多ご夫妻に見送られ店を後にした。

もちろん、乗車の攻防戦を済ませた後で。

「交互なんですから、次は私なんですけど」
「夕食は寄り道なので、交代はしません。
ちなみに、宿も1000年越えしたところではないので、目的地には含まれません」

ちっ、大和神社での攻防戦をしっかりと覚えてやがる。

「では、寄り道ついでにコンビニに寄って下さい」
「わかりました。それにしても、本多さんとお知り合いだとは驚きました」

「正確には、本多さんの奥様がウチの店の常連さんというだけですけどね」
「そうなんですね。世の中とは、広いようで狭いものですね」

「そうですね。私も、大河さんの知り合いが常連さんの旦那さんで驚きました」

コンビニに立ち寄り、支払いの攻防戦には勝利し、宿に向かう。

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