月とスッポン 奈良へ行く
「着きました」と言われて降りてみれば、これは・・
見るからに重厚があり高そうだ。
食事代も含め宿に泊まると言った時も、東京に着いてから、かかった費用をある程度「包めばいいか」と安易に考えていた。
これは、給与が吹っ飛びそうだ。
よし、大河を降ろして、退散しよう。
「鍵を下さい」
にっこりと笑って、助手席のドアを開け大河が立っている。
「なんで?」
「今、私を置いて立ち去ろうとしていましたよね」
笑顔が怖い。
「そ、そんな滅相もございません」
「冗談です。車を移動させてくれますので、鍵を下さい」
鍵を大河に贈呈する。
鍵を取り上げると、従業員らしき人に「お願いします」と手渡した。
「宿泊に必要な荷物を下ろしましょう」
後部座席のドアを開け、小さめのボストンバックを手に取る。
中に入っていく大河に、慌ててついていく。
そういえば、こいつ手ぶらだ。
金持ちは荷物を持たないのか。
なんてくだらない事を考えている。
フロントに声をかけている大河を確認し、立ち止まる。
エントランスを見渡せば、高級ホテルのような華やかさはないが、高級感あふれる落ち着いた重厚感を感じる。
ここは、私のような下民がいていいところではない事だけは確かだ。
さぁ、どうやって逃げ出すか?
“車に忘れ物をした”とでも言って、鍵を受け取り、そのまま逃走がベストだろうか?
「荷物をお預かり致します」
「イヤ、大丈夫です。自分で」
スタッフさんに声をかけられ、即座に否定する。
見るからに重厚があり高そうだ。
食事代も含め宿に泊まると言った時も、東京に着いてから、かかった費用をある程度「包めばいいか」と安易に考えていた。
これは、給与が吹っ飛びそうだ。
よし、大河を降ろして、退散しよう。
「鍵を下さい」
にっこりと笑って、助手席のドアを開け大河が立っている。
「なんで?」
「今、私を置いて立ち去ろうとしていましたよね」
笑顔が怖い。
「そ、そんな滅相もございません」
「冗談です。車を移動させてくれますので、鍵を下さい」
鍵を大河に贈呈する。
鍵を取り上げると、従業員らしき人に「お願いします」と手渡した。
「宿泊に必要な荷物を下ろしましょう」
後部座席のドアを開け、小さめのボストンバックを手に取る。
中に入っていく大河に、慌ててついていく。
そういえば、こいつ手ぶらだ。
金持ちは荷物を持たないのか。
なんてくだらない事を考えている。
フロントに声をかけている大河を確認し、立ち止まる。
エントランスを見渡せば、高級ホテルのような華やかさはないが、高級感あふれる落ち着いた重厚感を感じる。
ここは、私のような下民がいていいところではない事だけは確かだ。
さぁ、どうやって逃げ出すか?
“車に忘れ物をした”とでも言って、鍵を受け取り、そのまま逃走がベストだろうか?
「荷物をお預かり致します」
「イヤ、大丈夫です。自分で」
スタッフさんに声をかけられ、即座に否定する。