月とスッポン  奈良へ行く
「色恋という意味で仰っているのなら、わかってます。どうせ、寝るだけですから。
長時間の運転などでの疲労に加え、先程お腹いっぱい食べたので、ぶっちゃけ物凄く眠いです。お風呂に入ったら、お布団にたどり着く前に寝そうなぐらい眠いんです。
あと、明日も何ヶ所か回る場所がありますし、また長時間運転をするので、早めに起きて出発をしたいと思っています。余分な体力を使う余裕がないと言いますか。使うほどバカじゃないと言いますか」

途中で遮られないように、間を持たず私の主張を一気に捲し立てる。

「あっ。でも、大河さんが他人と同じ部屋にいるのは嫌だというのなら、私」

外にGOと親指を向ければ

「確かにそうですね。私も今日ほど歩いたのは学生以来です。流石に体力の衰えを感じます」

私に最後まで言わせずに、しみじみと大河も同意する。

目を大きく開け、大袈裟に驚いた顔をしてから、

「今日、どこを回って来たん?」

と聞かれたので今日のルートを大まかに話せば、

「詰め込んだな。そら疲れるわ」と呆れた顔で言われた。

「奈良を甘く見ていました」
「お疲れさん」

頭をポンポンされる。

これ、男の人好きだよね。ちょうどいい場所に頭があるからなのだろうか?

高そうなスーツを着た男が、話を無理やり元に戻すように「明日はどこへ行くん?」と聞いて来た。

素直に行きたいと思っておる場所を告げれば、

「そらハードやわ。車で帰るんやろ。そりゃ、はよ寝えへんと」

近づいてくるスタッフに見る。
それに気付いた大河は

「もう少し彼と話があるので、先に部屋で休んでいて下さい」
と私に席を外す機会を与えた。

本当に気がきく男だ。

「了解です。1時間ぐらいゆっくりと語り合って下さい」

< 49 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop