月とスッポン 奈良へ行く
「何も買わずに出発するのですか?」
悲鳴を上げなかった私を褒めて欲しい。
「はい。なにも かわずに いえに かえります」
「そうですか。奈良に行くと聞いたので、もしよろしければご一緒させて頂こうかと足を運んだのですが、無駄足だったようですね」
副音声が聞こえる。
貴重な私の時間を返せ と
正解がわからない。
ない頭をフルに回転させ、どうにかこの男から確実に離れなければならない。
「家まで」とは死んでも言いたくないが、ここに置いていくのも心苦しい。
「もしよろしければ、最寄り駅までなら送って行きましょうか」
なんとか絞り出した答えに、ニコッと微笑みそっと私に手を差し出した。
問いの答えは合っていたようなのだが、この差し出された手は一体なんだ。
座り込んでいる私に立てと言う事なのか。
触ってはいけない気がする。
無視する訳にもいかない。
「大丈夫です」とスッと立ち上がる。
運転席に乗り込もうとした瞬間、トンと背中を押させ、その勢いで助手席に追いやられた。
その瞬間を狙ったかのように男は運転席に乗り込む。
「せっかくなので、運転させてください」
「はぁ?」
「実はまだここのメーカーの車に乗った事がないので、前から興味があったんですよ」
そりゃ、高級車ばかり乗っている方には、縁遠いメーカーでしょうけど!
しかも軽自動車。
乗った事すら、間近で見た事すらないでしょうよ!
微笑みが怖い。
悲鳴を上げなかった私を褒めて欲しい。
「はい。なにも かわずに いえに かえります」
「そうですか。奈良に行くと聞いたので、もしよろしければご一緒させて頂こうかと足を運んだのですが、無駄足だったようですね」
副音声が聞こえる。
貴重な私の時間を返せ と
正解がわからない。
ない頭をフルに回転させ、どうにかこの男から確実に離れなければならない。
「家まで」とは死んでも言いたくないが、ここに置いていくのも心苦しい。
「もしよろしければ、最寄り駅までなら送って行きましょうか」
なんとか絞り出した答えに、ニコッと微笑みそっと私に手を差し出した。
問いの答えは合っていたようなのだが、この差し出された手は一体なんだ。
座り込んでいる私に立てと言う事なのか。
触ってはいけない気がする。
無視する訳にもいかない。
「大丈夫です」とスッと立ち上がる。
運転席に乗り込もうとした瞬間、トンと背中を押させ、その勢いで助手席に追いやられた。
その瞬間を狙ったかのように男は運転席に乗り込む。
「せっかくなので、運転させてください」
「はぁ?」
「実はまだここのメーカーの車に乗った事がないので、前から興味があったんですよ」
そりゃ、高級車ばかり乗っている方には、縁遠いメーカーでしょうけど!
しかも軽自動車。
乗った事すら、間近で見た事すらないでしょうよ!
微笑みが怖い。