月とスッポン  奈良へ行く
スタッフに案内され、入った部屋は異世界だった。

私にもう少し体力と気力があれば、テンション爆上がりで部屋中を散策するのだが。

今はただお風呂にゆっくりと浸かりたい。

準備をして、顔を洗っている間に湯船にはお湯が溜まる。はずなのだが。

こんなに大きな浴槽は必要なのだろうか?
深くは考えず、半身浴でもしながらマッサージ。
足は念入りに。

たっぷりとクリームも塗って、いままで体験した事のない極上のベッドへダイブ。

まるで雲の上にいるよう
そういうCMをよく目にしていたが、嘘や誇張でない事を実感する。
あぁ、このまま寝たら幸せだ。

・・・
・・・

眠いのに、寝れない。
落ち着かない。体のポジションが取れない。右向き、左向きとしてみる。

ダメだ。

シーツをもぎ取り、そのままソファに倒れ込む。
うん、沈む。
高級品が私の体には合わない。

畳がひかれた小上がりへ移動し、倒れてみる。
うん、この固さ。最高。
このまま寝たい。

だが、アッパー大河が見たら、このまま寝落ちしたと思われ、ベッドに運ばれる。

なんて恐ろしい事が起きないとも限らない。

最後の力を振り絞り、スマホに手を伸ばす。
【7時ぐらいに起きる予定。寝ている私を動かすな】
用件だけのメッセージを送り、目を閉じた。

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