月とスッポン  奈良へ行く
 真司に何故か怒られた。
相変わらず騒がしい奴だ。

今日一日、思いつくままとりとめなく、茜と会話をしていたせいか、真司との会話が続いている自分に気付く。

「一緒に行動するには、“思った事を全て声に出す事”が条件と言われてましたので」
「普段からそうしぃや」

「用件だけ話すように育てられましたので」
「わかるけども」

呆れ顔で私を見ながらため息をつく。

気を取り直したのか

「それにしたかて、今時の子にしては勘がええな。物怖じせんちゅうか」

急に真面目な口調をする真司。

「中学卒業から働いていると聞いていますので、その分大人びているのだと思いますよ」

そう、茜と話していると同年代、いや自分より少し年上の人と話している感覚になる時がある。

「博士取得してから社会に出てるから、社会人歴俺と一緒ちゃうか」

卒業後、MBAを取得してから入社した
「私ともさほど変わりませんよ」と言えば
「せやな」と真司が返す。

 高校へ行かず、社会に出ざる得ない子が存在する事が先進国である日本でも珍しい事ではないことはもちろん知っている。
 
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