月とスッポン  奈良へ行く
現れた近代的な建物に入っていく。

スマホ禁止と書かれているのに、説明はスマホを使えと言う難題に首を傾げながら中に入る。

教科書で見た事がある気がする玉虫逗子や、平面でしか見たことのない仏像などを様々な角度からじっくりと見ていく。

平面ではわからない細部の拘り、立体での温かみ。

「来て良かった」

この一言に尽きる。

「連れてきてくださって、ありがとうございます」

後ろから聞こえる声に驚き、振り向けば真後ろに大河が立っている。

「だから、背後に立たないでください」
「では隣に」

このやりとりが気に入った様だ。
こいつ、やっぱりめんどくさい。

じっくり堪能して、外に出れば開放感に大きく伸びをする。

「さぁ、サイトに最後の仕上げに夢殿へ行きましょうか!」
「えっ、西円堂へは行かないんですか?」

「それは次回にします。結構ゆっくりしてしまっているので、次が押しています」

時間を確認する。

ゆっくりしたつもりはないのに、かなりゆっくりしたようだ。
奈良、怖い。

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