月とスッポン  奈良へ行く
満足のいく写真を撮り終えて、辺りを見回せとそこには大河の姿がなかった。

どこに行ったのだろうと、経路を進む。

ひょこっと姿を現した大河が山の方を指差し

「奈良時代初期、鹿島神宮の神、武甕槌命(たけみがづちのみこと)が白鹿の背に乗り奈良へと旅立ち、御蓋山(みかさやま)の頂上の浮雲峰に降り立った。浮雲峰遥拝所があちらにありますよ」

と案内される。

よく知ってるなぁ
と関心しながら、大河についていく。

心を落ち着かせ、挨拶をしてから改めて遥拝所を見て回れば、なんてことはない。

案内板に書いてあるではないか!

思わず大河を見れば、そっと私と案内板の間に立つ。

「時間もないことですし、次に行きましょうか?」

何事もなかったかの様に、歩き出す。

まぁいいけどね。
まぁ、いいんだけど、なんか気に食わない。

「ここも次回はもっと時間をかけたいですね」
「“奈良を甘くみていた”の一言に尽きますね」

春日大社の木々に囲まれた参道から、舗装された道へ足場が変わる。

歩きやすい場所になれば、人も自ずと増えていく。

人が少なければ気にならない事も、人の目や声が聞こえると、居た堪れない。

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