月とスッポン  奈良へ行く
考えるのはやめよう。
どうせ何をやっても勝てる気がしない。

人生の勝者に敗者が勝てる訳ない。
一矢を報いてやろう。
でもそれは今ではない。
いつか絶妙なタイミングを狙って

とりあえず人間、諦めが肝心だ。

ため息をひとつ

「もうなんでもいいので、次のSAで止まって下さい」
「勝手についてきたのですから、運転ぐらいしますよ」

大の大人が首をコテってするな
可愛いって思ってしまったではないか

「結構です。ひとりだと思っていいのなら、自分で運転します。てか、運転したいんです」
「そうなんですか」

不服そうだ。
それならそれで好都合。
「こいつと一緒にいられない」と言わせればいいんだ。
海との関係悪化は、申し訳ないが背に腹はかえられない。
海ならわかってくれるはず‼︎

「大事なお体ですから、その身を私に委ねるのが心配でしょ。
降りて誰かに迎えを頼んだらどうですか?」

これぐらいの嫌味なら許されるだろう。

くっと言う笑い声が聞こえる。

蚊にでも刺された程度だろうか?
その余裕が腹立たしい

「その心配はしていませんでした。いつも海から聞いていて羨ましいと思っていたので、問題ありませんよ」

問題だらけなのだが、何を言っても論破されるに決まっている。

「とにかく次のSAで止まって下さい」
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