月とスッポン  奈良へ行く
 距離を置いて歩いていれば、全く人の視線を気にしない男が、何事もなかったかのように話しかけてくる。

そこは空気を読め!

とは思ったが、それをしない為の旅だと宣言した事を思い出す。

奈良バスターミナルの銘品館で、お土産を物色する。

海に、達ちゃんに、お店に買っていくモノをカゴに入れていく。
渡すべく人の数とカゴに入った数を確認して、レジに並ぶ。

横から、箱が一つ入ったかと思えば、カゴを大河に取り上げられる。

「私のも一緒に買います」

レジで「別で‼︎」と言おうと試みるが、
いつの間に買ったソフトクリームを差し出され、口にしているうちに会計を終わらせてしまう。

学習したな。

「おいしい」と声が出れば、
「吉野葛と大和茶のミックスにしてみました」
と買った荷物を手にした大河が満足そうにこちらを見ている。

「あとでお金払いますからね」

力強く主張はみるが、「一緒に買うものの会計は私です」と力強く言われてしまう。

自分のモノは自分で
と言ったはずだが、屁理屈だ。
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