月とスッポン  奈良へ行く
さっきまで反省していたはずなのだが。

私の手を握り、中金堂へと進んで行く。

「国宝館にて八部衆立像を拝観したら、この旅も終わりだと思うと寂しいですね」

街のど真ん中にあるとは思えない広場に佇む中金堂を眺めながら、大河が言うので

「私はまた来ますけどね」とニヒルに笑って見せる。

「その時はまたお声がけください」
「またって、私は誘った記憶が一切ないんですけどね」

「そうでしたか?」

いい加減繋いだ手を離して欲しいのだが、タイミングが難しい。

振り解けなくはないが、繋いだまま嬉しそうに歩く大河を見ているともう少しこのままでもいいかな。

そう思ってしまう。
これが旅マジック

< 72 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop