月とスッポン  奈良へ行く
終わり良ければ
寂しいと思えど、亀山PAから始まり、
また交代しながら高速を走らせている最中ずっと会話が途切れる事はなかった。

「まだ伊勢神宮に行けていない」
「春日大社に行ったのですから、鹿島神社にも行かないと」
「比叡山も欠かせない」
「それなら近江神宮にも寄りたい」
「冬になる前に長野を訪れたい」
「雪の五稜郭も風情がありそうですね」
「国宝を見るなら京都へも足を運ばないと」
「世界遺産なら厳島」

永遠と続く連想ゲームのような会話をしていれば、あっという間に静岡に突入していた。

辺りはすっかり暗くなり、海も富士山も絶景は望めないけれど、
SAで新鮮な海鮮と有名なB級グルメを夕食に堪能する。

「好きな所で降りてください。あとは適当に帰りますので」

首都圏に入り、大河に声をかけておく。

家まで送るべきか?、最寄り駅でいいのか?

考えるのがバカらしくなり、全権を本人に委ねる事にした。

最後の休憩を終え、ハンドルを握る大河。

「終わりだと思うと、少し寂しいですね」
「楽しい時間は、いつでもあっという間ですからね」

「楽しいと思っていただけたのなら、よかったです」
「それ、無理やり着いてきた人のセリフじゃないでしょ」

「そうですか?これでもご迷惑をおかけして申し訳なく思ってはいるのですよ」
「いや、その言い方絶対に思ってないでしょ!」

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