月とスッポン  奈良へ行く
大河がクスッと笑う。

うん、絶対に悪いと思っていない。

「とても良い休日になりました。日本にもまだまだ行っていない場所がありますね。良い刺激を頂きました」

しみじみ言う大河の声を聞きていると、次第に見慣れた光景になって行く。

こいつ、どこへ向かっているんだ?

「次回はどこへ行くのですか?」
「行きたいと場所はいっぱいありますけど、行くのは未定です。
休みが取れそうになってから決めるタイプなんで」

大河が乗り込んで来たコンビニを通過する。

この先に駅はない。あるのは、私の・・・

「その時はまたお声がけ下さい」
「イヤです。って、どこに向かってるんですか!」

「茜の家です」

平然とした顔で言うんじゃない‼︎
っていうか、なんで私の家を知っている‼︎

自宅設定したナビも高速に入った時に止めたはず。
ということは?

家が見えると、入り口には二人の影。

はぁ、これで家と職場が完全にバレた。

「車はどこに停めますか?」

平然としている大河に額に手を当てながら「階段の近くに」と答えた。

止まったと同時に車から降り「海」と海に抱きつく。

「あーちゃん、大丈夫だった?」
私のハグを前面から受け止めた海が私を労わる。

「本当にごめんね」
「海は全然悪くないよ。悪いのは、あそこにいる大人たちだ」

大河に声をかけている慶太郎達を指さす。

「だよね。私も慶太郎さんに言ったんだよ」

二人抱きつきながら、悪い大人達を睨みつける。
微笑ましそうにこっちを見るでない!

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