本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。


 そのメッセージはこんなものだった。


「S:楽しかったね♡」
「S:もう会いたくなっちゃってる♡笑」


 一体誰なの!?
 私の頭は真っ白になっていた。

 このSという人物。ハートマーク付きのメッセージ。
 それにもう会いたくなってる、だなんて。


「まさか、浮気……?」


 私はバッとバスルームの方を振り返る。
 バスルームからはジャージャーというシャワーの音が聞こえており、真潮は私に気づいていないようだ。

 部長との飲み会じゃなかったの?
 本当は誰と会っていたの?


「出たよ」
「……っ」


 お風呂から上がった真潮をリビングで待っていた。
 何も気づかずタオルで濡れた髪を拭いている真潮に思い切って尋ねてみる。


「あの、実はさっき真潮のスマホの画面が見えちゃったの」
「え?」
「Sって誰……?」


 もしかしたら声が震えていたかもしれない。
 すがる気持ちで真潮を見つめた。

 真潮はスマホを確認すると、「ああ」と呟く。


「会社の人。飲み会に一緒にいたやつ」
「お、女の人?」
「男だよ。サトウってやつで俺のこと揶揄ってたまにこういうの送ってくんの」
「本当に!?」


 思わず聞き返すと、真潮は大きな溜息を吐いた。
 明らかに不機嫌になった時の表情だった。


「何?もしかして俺が浮気したとか思ってんの?」
「っ、だって、また会いたくなったとか……」
「だから同僚だって言ってんだろ!俺のこと信じられないのかよ!」


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