本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。
そう話しかけられて、見上げた人物に驚く。
なんと鷹宮くんだった。
「鷹宮くん。うん、どうぞ」
「ありがとうございます」
まさか鷹宮くんが来てくれるとは思わなかった。
こっちに来ても大丈夫なのかな。
「なんだよ鷹宮。向こうはいいのかよ、このモテ男」
「いいんです。ちょっと疲れたんでのんびりさせてください」
揶揄うような先輩の言葉にもクールな鷹宮くん。
なるほど、さっきから色々質問攻めにされていたものね。モテるのも大変だ。
「お疲れ様」
私は微笑んでグラスを差し出す。鷹宮くんの表情が少し綻び、「お疲れ様です」とグラスを合わせてくれた。
「えー鷹宮もそんな風に笑うんだぁ」
「どういう意味ですか」
「もしかして鷹宮って、糸金さんみたいな人がタイプなの?」
ええっ!?先輩ったら何を言い出すの!?
「違いますよ!私みたいな地味な女、鷹宮くんに失礼ですっ」
即座に否定してしまった。
だって、そんなことあり得ない。鷹宮くんは優しい人だから私みたいなやつにも話しかけてくれるだけなのだ。
「それに私、彼氏いますから」
ただでさえ、鷹宮くん狙いの女子はこの場に多くいるのだ。余計な火種は作りたくない。
先輩はだいぶ酔っているようで、「そうなんだ〜」とそれ以上は掘り下げてこなかった。
「……」
ホッとしていた私は、鷹宮くんが何やら複雑そうな表情をしていたことに気づかなかった。