本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。
私はふと、向かい側の道路を歩く人物に目を奪われた。
何となく背格好が真潮に似ているような気がする。
でもこの辺は真潮の会社からは近くないし、人違いなのだろう。そう思って視線を外そうとした時――、
「ましおーっ!」
甲高い声が私のすぐ横をすり抜けた。
えっ、と思わず振り返る。
ロングヘアを外巻きにした女性が大きく手を振りながら道路を渡り、向かい側にいた人物の元へと駆け寄った。
私は自分の目を疑った。
でも目を凝らして見たその人物は、間違いなく真潮だった。
どういうこと!?
どうして真潮がいるの!?その女は誰なの!?
巻き髪女子は真潮の腕に自分の腕を絡ませた。
そのまま二人はどこかに向かって歩いていく。
「――糸金さん?」
急に立ち止まった私に対し、鷹宮くんが心配そうに顔を覗き込む。
「どうかしましたか?」
「……あ、ごめん鷹宮くん。用事思い出して……先に帰っててくれるかな?」
「え?」
「ごめんね!」
「糸金さん!」
私は駆け出してあの二人を追いかけた。
お願い、やっぱり見間違いであって欲しい。
変な頭痛と耳鳴りがして、おかしくなりそうだった。
二人の人影を追いかける。どんどん動悸が激しくなる。
気づかれないようにしなければいけないのに、息遣いが荒くなっているのを感じていた。
「……!!」
二人が入った場所を見て、愕然とした。
腕を組んだまま吸い込まれるように入っていった先は、ラブホテルだった。