本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。


 涙腺がゆるゆるになってしまった私は、鷹宮くんの顔を見ただけでまた涙が溢れ出す。
 震える手で鷹宮くんからハンカチを受け取るのがやっとだった。


「っ、う……っ」
「糸金さん、立てますか?」


 そう言って鷹宮くんは優しく私の左手を取り、ゆっくり立ち上がらせてくれた。
 そして鷹宮くんが着ていたスーツのジャケットを私の頭に被せ、頭を抱き寄せてくれた。


「誰にも見えないですよ。俺も見てませんから」
「〜〜っっ、うわあああああ」


 私はいつの間にか鷹宮くんにしがみついて泣いていた。
 大声で泣きじゃくる私を周囲の目から隠しながら、優しく寄り添って守ってくれた。

 何も言わず、ただ私が落ち着くまで傍にいてくれる鷹宮くんの優しさに、今は甘えることしかできない。
 ボロボロに傷ついた私にはそれ以上の判断力などなかった。


「――糸金さん、うちに来ませんか?」
「え……?」
「タクシー拾えば案外近いんですよ。そんな状態の糸金さん、一人にできません」
「……」


 会社の後輩とはいえ、別の男性の家に行くなんて良くないことだと思う。
 頭ではわかっているけれど、心が追いつかなかった。

 何より私は帰りたくない。
 今は真潮と二人で住む家になんて、帰りたくない。


「……行ってもいい?」
「はい」


 ごめんなさい、今だけはあなたの優しさに甘えさせてください――。
 落ち着いたら、すぐに帰るから。

 私は鷹宮くんに支えられながらタクシーに乗り、現実から逃れるようにその場から立ち去った。


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