本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。


 鷹宮くんの優しさにじんわりと心が温かくなっていくのを感じた直後、唇に何かが押し当てられられた。

 柔らかくて少し温かくて、フレッシュさの中にほんのりと官能的な甘さがある香りが鼻孔をくすぐる。
 この香りは鷹宮くんがいつも付けている香水の香りであり、即ち鷹宮くんが至近距離にいて――尚且つ唇を重ねられていると気づくまで数秒かかった。


「……っ!?」


 唇が離れ、私の目の前に唇が赤く染まった鷹宮くんの顔がある。
 その口紅のアトがキスをしたのだと生々しく意識させる。


「え……っ!?」


 な、なんで?どうして急に?
 突然キスされて涙なんてどこかに消えてしまった。

 鷹宮くんは至ってクールで真顔であり、長い指先で口紅を拭う。その仕草があまりにも色気が溢れていた。


「すみません、あまりにも糸金さんがかわいかったので」
「っ!?」
「俺、糸金さんのことが好きです」
「へ……、」
「あんな男やめて、俺のものになればいいのに」


 待って待って、何が起きてるの?
 私は軽くパニック状態に陥る。

 先程まで彼氏の浮気を知って絶望の淵にいたはずなのに、後輩にキスされて告白されているなんて。
 急展開すぎて理解が追いつかない。


「冗談じゃないよね……?」
「本気です」


 鷹宮くんが人を揶揄うようなことを言う人ではないことはわかっている。いつでも真面目で誠実な人なのだ。

 だからこそ、あの鷹宮くんが私のことを?
 信じられるわけがない……!


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