本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。


* * *


 その日真潮は帰ってこず、帰宅したのは翌日の朝だった。
 全く悪びれる様子もなく、真潮は平然としていた。


「ただいま。ごめん、昨日すごく忙しくて遅くまで残業でさ。その後飲みに行ったらそのまま終電逃しちゃったんだわ」


 ……どうして堂々とそんな嘘が言えるの?

 私は無言で昨日の写真を突き付ける。


「はっ!?これ……っ」
「……見たんだよ。残業だったなんて嘘でしょ?本当は浮気してたんだよね?」


 私が詰め寄ると、流石の真潮も怯んだように口を噤む。
 私は間髪入れずに畳み掛けた。


「真潮のこと信じてたのに!最低だよ!!」


 すると真潮は、「はぁーーーー……」と大袈裟なくらい大きな溜息をついた。
 機嫌が悪くなった時の表情に変わり、私は反射的にビクッとしてしまう。


「違うよ。これは確かにホテルだけど、ビジネスホテル。一緒にいるのは今担当してる転職活動中の人。色々相談に乗ってただけだよ」
「そんな嘘が通用すると思ってるの!?」


 信じられない!この期に及んでそんな見え見えの嘘をつくなんて!


「確かに最初は一緒に入ったよ。でも彼女は泊まってない、ちょっとだけ休んで先に帰ったんだ」
「だから嘘でしょ!?浮気してたくせに!!」
「そんな証拠、どこにもないだろ?」


 な、何を言っているの……?


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