本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。
急に立ち上がって近付いてきたかと思うと、スッと私の髪を触る。
「っ!」
「糸屑、付いてますよ」
鷹宮くんは短い糸屑を見せて意地悪く笑う。
だけどその小悪魔的な笑顔があまりにも美しすぎた。
しかも鷹宮くん、何だか顔近くない……!?
「あ、ありがとう」
「ふっ、糸金さんの頭に糸」
「言うと思った!」
「なんでこんなところに糸屑付けてんですか?」
「知らないよっ」
鷹宮くんは誰に対してもクールなんだけど、私に対してはちょっとくだけた態度で接してくれたりする。
私には心許してくれてるのかな?と思うと結構嬉しい。
何だかんだで頼ってくれる、かわいい後輩だ。
「つーか糸金さん、飯まだですよね?」
「ああうん、そうだね」
「なんか軽く食べて行きません?」
「ごめん、帰ってご飯作らないといけないんだ」
作ると言っても、昨日のうちに準備しておいたから温めるだけなんだけど。
「……そうですか」
「ごめんね!」
「……いえ」
「それじゃあそろそろ帰るね。お疲れ様!」
「お疲れ様でした」
私は鷹宮くんに笑顔で手を振り、会社を出た。